Chapter 12. 少量細胞からChIP-seq解析を行う方法


次世代シーケンシング技術(NGS)が普及しより利用しやすくなるにつれて、ヒストンマークまたは転写因子の結合部位の同定や、タンパク質-DNA相互作用のゲノムワイドマッピングには、クロマチン免疫沈降したDNAをNGSで検出するChIP-seq法がゴールデンスタンダードとなっています。

ここでは、少ない細胞量からChIP-seqを行う際に気を付けることのできるいくつかのポイントとお勧めについて紹介します。

少ない細胞量からChIP-seq

ChIP-seqは、結合したDNA断片の濃縮によって測定されるタンパク質-DNA相互作用の定量的および定性的分析に使用できる全ゲノムのハイスループットデータを提供するのに有利な手法ですが、欠点がないわけではありません。

最大の欠点は、大量の出発物質が必要で、通常は必要なライブラリの調製のために何百万個もの細胞を準備しなくてはならない点で、希少サンプルやDNAが取りにくい難しいサンプルなど、限られたサンプル量で作業する科学者にとって、ChIP-seqは実行可能な分析方法ではありませんでした。

ChIP-seqの手順は複数のステップにわたっており、少量の細胞からChIP-seqを行う場合、それぞれのステップにおいて最適化が必要です。

クロマチン免疫沈降

クロマチン免疫沈降では、ChIPに使用されるセルの数が減少すると、ビーズや抗体との非特異的相互作用により、S / N比は低下する傾向があります。

このため、最適なビーズキットの選択や、ChIPバリデート済みの抗体(ChIPグレード抗体)の使用によって、可能な限りノイズの低減に努める必要があります。

固定化されすぎたクロマチンはせん断を妨げるため、ライブラリー化されるクロマチンDNA量が減少します。もし可能であればクロマチンDNAのゲル電気泳動像を固定化時間のタイムコースで取得し、最適な固定化時間を決めておくとよいでしょう。

また、少量サンプルをソニケーターで処理する場合、超音波エネルギーがタンパク質上のエピトープにダメージを与えるため、マイルドな出力のソニケーターの使用が望ましいと言えます。

プローブ型のソニケーターは液中にフォームを生じやすく、フォーム中にサンプルをロスしやすいため少量サンプルには不向きです。

True MicroChIP kitでクロマチン免疫沈降

Diagenode社では、少量細胞からのChIP-seqのために特別に最適化された新規技術とキットでこの限界に取り組んできました。

クロマチンの断片化条件、抗体濃度、キャリアの選択、洗浄バッファーのストリンジェンシーを細かく検討した結果、10000個の細胞からChIP-seqのライブラリー調製に十分な量のChIP済サンプルDNAを得ることが可能なTrue MicroChIP kit(C01010130)の開発に成功しました。

このキットはChIP-seq gradeの抗体を採用しており、エピトープを保護するマイルドな処理を可能とした超音波破砕装置Picoruptorとの組み合わせによって少量細胞からの効率的なChIPサンプルの取得を可能としています。

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True MicroChIP kit - diagenode.com

ChIP-seq手順に必要な細胞数はわずか10,000個です。複数のヒストンマークについてバリデートされており、少量サンプルからNGSライブラリーを作成できるTrue MicroChIP kitの詳細はグローバルサイトをご覧ください。

NGSライブラリー調製

NGSライブラリーの調製では得られたクロマチンDNAをNGSで解析するため、DNAの両端にアダプター配列を連結する必要がありますが、少量のDNAからライブラリーを調製する場合はライゲーション効率がライブラリーの質を左右します。

クロマチンDNAの精製度が高いことも重要ですが、アダプターが正しくクロマチンDNAに付加し、アダプターダイマーが生成しないようアダプターがきちんと処理されていることも重要です。

末端のループ化や化学修飾により、アダプターダイマーを減らすことによって、ライゲーション効率を向上させ、少量のDNAからのライブラリー調製を成功に導くことが可能です。

MicroPlexライブラリー調製キット

Diagenodeでは、化学修飾ステムループアダプターを採用し、ライゲーション効率を高めたMicroPlex Library Preparation Kit v2(C05010012), MicroPlex Library Preparation Kit v3(C05010001)も販売しております。

また調製手順におけるロスを削減し、効率を向上させたことにより、少量のDNAから1チューブ、わずか3ステップ・3時間でNGSのテンプレートとして使用できるライブラリーを調製できます。

True MicroChIPキットと組み合わせることによって少量細胞から安定してライブラリーが得られる性能は、市場で広く評価されています。シーケンス結果からも品質の良いライブラリーが得られていることが確認されています。また、手順が簡単で所要時間が少なく、初心者にも簡便にライブラリの調製を行っていただけます。

Illumina社のシーケンシングテクノロジーに対応したインデックスも搭載しており、TruSeqキットの代わりに使用していただけます。

ChIP-seqキットパッケージで経済的に

微量サンプルから高感度なNGS解析を可能にするこれら二つのキットを組み合わせたパッケージTrue MicroChIP & MicroPlex Library Preparation™ Package(C01010131)をご利用いただけます。初めて実験を行う方、系を初めて立ち上げた方にとって、別々に購入する手間がなく最適です

特に少量サンプル、培養のしにくい細胞、腫瘍組織や蛍光活性化セルソーティング(FACS)で処理したサンプル、またDNA収量が確定できないサンプルなどに便利にご使用いただけるパッケージです。

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True MicroChIP & MicroPlex Library Preparation™ Package - diagenode.com

ChIPとNGSライブラリー調製に必要な試薬をオールインワンでお買い求めいただけます。世界中でご利用いただいている本キットの詳細は、グローバルサイトにてご覧ください。


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