Chapter 8. クロマチン断片化条件を選びましょう


クロマチン断片化には超音波処理装置の条件設定が大事ですが、超音波処理条件は多くのパラメータに左右され、希望の鎖長の断片を得ることは困難です。以下にクロマチン断片化条件の決定のポイントについて説明します。

サンプルに応じた超音波処理の最適化

超音波処理時間の長さは、細胞型、細胞密度、試料量、固定時間、バッファー中の界面活性剤濃度などの多くの因子に依存します。したがって、新しい実験ごとに超音波処理条件を最適化することが重要です。

一番初めに試すソニケーションサイクル

Picoruptorを使用して新しいChIPプロジェクトを開始するときは、最初に30秒ON / 30秒OFFの超音波サイクルを5、10、15回で振ったタイムコース実験をお勧めします。通常の実験条件では、2~3サイクルのより短い音波処理時間でも十分満足できるクロマチン断片が得られます。

最善の方法としては、最短の超音波処理時間を選択することで、満足のいくChIP効率(最高の回収率/最低のバックグラウンド)が得られます。

過度の超音波処理は避けてください。
特にChIPで非ヒストンタンパク質を評価する場合、ChIP実験の効率が低下する可能性があります。

細胞株ごとに最適化する

超音波処理は、新しい細胞株ごとに最適化する必要があります。
細胞はそれぞれ超音波処理に対する耐性が異なります。いくつかの細胞株は、他の細胞株よりクロマチン断片を得ることがより困難です。一般に、初代培養細胞、リンパ球関連細胞、線維芽細胞ではクロマチン断片を得にくいです。 これら「難しい」細胞で作業する場合は、2段階の溶解(核の分離を含む)が推奨されます。

可能であれば常に新鮮な細胞をクロマチン調製に使用してください。
固定された細胞の凍結処理は、超音波処理に対するDNAの感受性が変化するため、高分子量画分が残存し断片化の再現性が低くなる可能性があります。

細胞密度に応じて最適化する

細胞密度に対し、超音波処理時間を調整してください。
効率的な断片化のためには、細胞密度が重要な要素です。サンプルの粘度がキャビテーションプロセスを妨げて、断片化の効率を下げる可能性があります。高密度細胞懸濁液は、より多く超音波処理しなければなりません。細胞密度が高すぎると、超音波処理の効率が低下します。断片化の結果が思わしくない場合は、細胞密度を下げることを検討してください。一般に、100μlあたり細胞密度が1×106〜3×106個 細胞(最終体積に応じてスケール)で良好な断片化が期待できます。

断片化バッファーを最適化する

断片化用バッファーには界面活性剤、好ましくはSDSを加えてください。
SDS含有バッファーは、超音波処理効率およびクロマチン収率を増加させる効果があります。さらに、より特異的なシグナルをもたらすエピトープを増加させる場合があります。しかしながら、高いSDS濃度は、DNAに直接結合していないタンパク質のシグナルを部分的に消失させる可能性があります。総合的に見て、断片化用バッファー中の最適なSDS濃度は実験設定(細胞型、標的タンパク質、およびその後の実験用途)に応じて選択できます。

断片化バッファーの最適化には、Chromatin Shearing Optimizationキットをご利用いただけます。

表・検証済みのDiagenode社製Chromatin Shearing Optimizationキット

(キット名からグローバルサイトの製品情報にリンクしています)

 Chromatin
Shearing
Optimization
Kit Low SDS
Chromatin
Shearing
Optimization
Kit Low SDS
Chromatin
Shearing
Optimization
Kit Medium SDS
Chromatin
Shearing
Optimization
Kit High SDS
Chromatin
Shearing
Optimization
Kit
(Universal Plant
ChIP-seq kit)
SDS濃度< 0.1%0.20%0.50%1%-
核分離の必要性はい
はい
はい
いいえ
はい
処理可能な細胞数1×106
細胞
1×106
細胞
1×106
細胞
1×106
細胞
-
該当ChIPキットiDeal ChIP-
seq kit for
Histones
iDeal ChIP-
seq Kit for
Transcription
Factors
HighCell#
ChIP kit
True MicroChIP
kit

LowCell# ChIP kit
Universal
Plant ChIP-
seq kit
Cat. No.C01020010C01020013C01020011C01020012C01020014
試料量を最適化する

効率的で再現性のある断片化には、推奨サンプル量を使用することが重要です。

この推奨範囲から逸脱すると、非効率な断片化および再現性の欠如につながります。サンプルの量が減少するにつれて、断片化効率が向上することに注意してください。例えば、100μlまたは300μlの試料に対して同じエネルギーを適用した場合、一般的に100μlの体積のほうがより効率的に断片化されます。

超音波処理には推奨チューブのみをご使用ください。
Picoruptorチューブは、Picoruptor専用に開発されました。専用チューブによって、超音波強度の減衰を最小限にして、試料への最大エネルギー送達を保証することができます。

断片化クロマチンの品質管理

同じプロセスをルーチンで実施している場合でも、精製したクロマチンの各バッチの確認を行ってください。実験を行う前にクロマチンの品質を確認することが重要です。

クロマチン断片の正確なサイズ決定の前に、RNase処理およびDNA精製を含む脱クロスリンクを行うことが推奨されます。脱クロスリンクを行わなければクロマチン断片の大きさを正確に測定することはできません。クロスリンクの存在によって電気泳動における泳動度が遅くなるため、フラグメントサイズの誤った解釈が生じるためです。またRNase処理によって、分解されたRNAに起因するバックグラウンドを有意に減少させ、泳動像の視覚的評価を改善できます。


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