全般 (27)
【FAQ】転写因子とタグ付きタンパク質のChIPコントロール
タグ付きタンパク質については、良好なコントロールの選択が実際に重要なためケースバイケースで考慮される必要があります。
ChIPワークフローの全体的な成功の確認には通常のCTCFまたはPolIIおよびIgGコントロールを使用できます。
また、KO/突然変異体の細胞系使用や、同じタグを有する異なるタンパク質の使用などもコントロールとして有益と考えられます。
ターゲットとなるタンパク質がどこに結合しているかがあらかじめわかっている場合は、qPCRプライマーは結合部位とエピトープのない領域上にそれぞれ設計することが可能です。
【FAQ】植物サンプルのタグメンテーション
残念なことに、植物から核を単離するための検証済みのLysis試薬は弊社では有しておりません。
弊社のATAC-seqキット附属の核単離試薬を用いて植物のATAC-seqを行い、非常に良好な結果を確認しておりますが、正確な分離プロトコールを植物試料タイプごとに確立する必要があると考えられます。
【FAQ】CUT&Tagのネガコンはシーケンスする?
CUT&TagでのIgGは主に、実験の質を検証するためのネガティブコントロールとして使われています。
IgGで取得したデータはバックグラウンド情報として利用することはできますが、塩基配列を決定する必要はありませんが、その後の実験で必要であればシーケンスを決定することも可能です。
【FAQ】凍結細胞のCUT&Tag実験
一点言えることは、各サンプルタイプでまずテストされるべきであり、液体窒素による凍結保存が機能する可能性はあります。
しかし、液体窒素で急速凍結すると細胞が損傷を受ける可能性が高く、細胞の完全性(cell integrity, これはConAの結合と保持に影響する)及びクロマチン構造の両方が破壊される可能性があるため、保存液などを加えて-80℃のディープフリーザーなどで凍結保存を行うことを推奨します。
(参考URL: 冷凍細胞のシングルセルRNA-seqへの適用)
https://www.nature.com/articles/s41598-019-46932-z
一方、組織については、液体窒素による急速凍結を行い、実験時に解凍、続いて核分離を行った方が、より良好な結果が得られる可能性があります。この手順では、ATAC-seqワークフローを提供する組織抽出モジュールを試すことができます。
https://www.diagenode.com/jp/p/ATAC-seq-package-tissue-C01080006
【FAQ】Tn5が多いと過剰転移する?
いいえ、Tn5による過標識は認められておりません。
同じTn5量あたりのサンプルを少なくしたとしても、あるいは同じサンプルタイプに対してより多くのTn5を使用したとしても、最終的なフラグメントサイズとライブラリの質について同様に良好な結果が得られております。
【FAQ】1回の免疫沈降当たりクロマチン量は?
まず、ChIPにアプライするサンプル量については、クロマチン量で調整を行うと時間がかかり、かつ正確でないため、初期細胞数または組織相当量での調整を推奨します。
次にLow input ChIPで使用する細胞量について、ヒストン用True MicroChIPキットでのlow-input ChIPでは、最低10K個細胞を推奨します。μChIPmentation kit for histonesの場合、最低でも5K個細胞を推奨します。
組織サンプルを使用しており、生検や重量測定が不可能で、クロマチン量で標準化したい場合は、標準組織量を決め、その量でのクロマチン量を選択した方法で測定し、連続したサンプルで同じ量を目指すことで、選択した方法での量の調整や測定誤差の最小化をご検討ください。
【FAQ】ChIP実験に使用できる細胞数が少ない時どうする?
細胞・組織サンプル量が少ない場合でも、ヒストンをターゲットとしたChIPの場合は非常に優れたChIPデータを取得できることがよくあります。
以下の手順を調整することにより、最少10,000個のサンプルを確実に処理できます。
- サンプルのロスを避けるために取り扱い手順を減らします
- 段階的溶解プロトコールではなく1ステップでの溶解プロトコールを使用してください
- 超音波処理プロトコール、サンプルのバッチ処理量、抗体/ビーズ量を調整します
- ChIP-seqで検証された高品質の抗体(ChIP-seqグレード抗体)を使用します
- オンビーズ(protein Aビーズ上)ライブラリの生成を検討してください(ChIPmentation)
上記の推奨事項は、True MicroChIPおよびµChIPmentationワークフローで最適化された形で実装されています。是非ご利用ください。
【FAQ】FLAGタグ付加した転写因子のChIP
標的タンパク質に対する抗体が利用できない場合、タグ抗体を使用したエピトープタグタンパク質の免疫沈降が一般的に使用されます。タグ抗体を使用したChIPによって、エピトープタグ付きDNA結合タンパク質が結合するゲノムの領域を特定することができます。
この技術には、目的のタンパク質に対して直接精製された抗体を使用するよりも多くの利点があります。以下にリストします。
- 新規または免疫原性の低いタンパク質に対する抗体を生成するための時間と費用の削減が可能です
- エピトープタグには、十分に特性が検証された複数の抗体が利用できます。これらの抗体はエピトープタグに特異的であることが証明されており、それによって交差反応性が最小限に抑えられます
エピトープタグ付けは広く使用されている手法ですが、以下に示す独自の制限があります。
- エピトープタグはタンパク質の構造に影響し機能を妨げる可能性があります。
- 有害な影響をもたらす可能性のある異種プロモーターが原因で、異常なレベルの発現が見られる場合があります。
- タグ配列によっては側鎖が他の生体分子などとクロスリンクしてしまい、抗体への反応性が下がる場合があります。
(FLAG)-tag ChIP-seqは、Diagenodeによってサービスとしても提供されています。詳細はお問い合わせください。https://www.diagenode.com/en/categories/chip-seq-service
【FAQ】2次相互作用の検出に最適なキットについて
お持ちの抗体がH3K4me3ではなく、それを介して相互作用する別のタンパク質に結合するケースですのでこの場合はiDeal ChIP-seq kit for TFをお勧めします。
本キットはより多いサンプル量の処理・より強い固定化条件で免疫沈降を行う場合に対して最適な条件が得られるよう調整されています。
この場合のような2次相互作用を検出するために、クロスリンク試薬としてホルムアルデヒドに加えてChIP Crosslink Goldを混合して使用することもお勧めします。
【FAQ】抗体の性能評価法について
抗体の品質はChIPの成否を分ける絶対的な鍵です。
特にChIPに使用する抗体の場合、アフィニティ測定、ウェスタンブロットまたは免疫蛍光分析はChIP条件下での性能を必ずしも反映しないため、ChIP/ChIP-seqでの直接検証が最も正確です。
抗体によるターゲットの濃縮効率を定量化し、他の抗体やバッチと比較するためには、ChIP実験を行い、ChIP-qPCR(安価で迅速)またはChIP-seq(高価で時間がかかるが最適、Diagenodeでは独自に実施)により結合した部位と結合していない部位(例えば遺伝子間領域)の濃縮度を比較することが最適です。
【FAQ】ChIP-MSにおけるソニケーション条件
ChIP-MSはクロマチン関連タンパク質や転写因子/共役因子をタンパク質/タンパク質とタンパク質/DNA間で架橋し、免疫沈降した後に質量分析によって標的のタンパク質と相互作用因子を同定する手法です。
その際のソニケーション条件ですが、タンパク質を損傷しないような条件を維持する上で、サンプルの種類・量・体積に応じた個別の条件を設定する必要が常に生じます。
従って、サイクル数を振って最適なソニケーション条件をご検討ください。
また、サイクル数が多すぎるとタンパク質がクロマチンから解離する場合があります。他方で一部のタンパク質は、他のタンパク質と比べて超音波処理に耐性な場合もあります。
このため、超音波処理の検討時に、目的のタンパク質に対するWestern Blotを実施することもお勧めします。
【FAQ】細胞の凍結保存
一般的に可能な限り新鮮な細胞を実験に用いることが推奨されますが、凍結保存が必要で短期的な保存の場合、-20℃での凍結が可能です。
長期の保存が必要な場合は-80℃での保存が望ましく、これによりより長い間(~数か月)サンプル中のエピトープを保存できると考えられます。
【FAQ】ChIPでの収率の最大化
まず、100万個の細胞はChIPでは十分な収量の得られるスタンダードな量と考えられます。手技に応じてロスが生じるのはしょうがないことですが、収率を最大化できるかは細胞の種類に正しく対応したプロトコールを正確にこなせるかどうかに依存します。
実験系を初めて立ち上げる際はスタンダードな量よりも多い量を処理し、得られたクロマチンより100万個・細胞に相当する量を分取してChIP実験に使用することを推奨します。もし初発サンプルの量が少ない場合には、1クロマチン調製あたり最小10000個・細胞から実験が行えるプロトコールがありますのでご利用ください。
【FAQ】異なる細胞に繰り返しChIP
特定の細胞で一度確立したChIPの条件で新たな種類の細胞を用いてChIPを行いたい場合、多くの場合では同じプロトコールを転用できますが、調整が必要な場合もあります。以下のポイントを押さえることにより、円滑に実験を行いましょう。
① 細胞が異なっても細胞数を揃えてChIPを行うことにより、検討条件を整理できます
② ホモジナイズと可溶化条件について、細胞に応じた条件検討が必要な場合があります
③ クロマチン断片化の条件(ソニケーションなど)に調整が必要な場合があります
④ 細胞数が異なる場合などには、再度抗体量の最適化を行うことが推奨されます
⑤ qPCRのプライマー(ポジコン、ネガコン領域)配列が使用可能かご確認ください
ダイアジェノードのソリューション一覧をご紹介します(グローバルサイトに移動します)
【FAQ】エピトープタグ付き転写因子のChIP
抗タグ抗体を利用したエピトープタグ付きタンパク質の免疫沈降は、一般に標的タンパク質に対する高品質の抗体が入手できない場合に使用されています。
エピトープタグをターゲットとしたタグ付きタンパク質のChIPは、目的のタンパク質に対する抗体を使用した場合より以下の点で優れています。
・新規タンパク質、あるいは免疫原性の低いタンパク質に対する抗体を取得する時間や費用を削減できる
・エピトープタグはすでに性質が良くわかっており、また検証済のエピトープタグに特異的な抗体が多く利用できるため交差反応を最小限に抑えられる
エピトープタグ付加タンパク質のChIPは広く行われていますが、実施に際して以下のような制限があります。
・エピトープタグがタンパク質の構造、結合親和性/部位、機能を妨げる可能性がある
・異種プロモーターの導入により異常な発現が生じ、結果に偏りが生じる可能性がある
・FLAGタグなどLysを含むタグはクロスリンカーと反応し抗体との反応を阻害する。このほかのエピトープタグでも、ChIP用に使用するには配列に注意が必要となる。Ty1のように、Lysを含まないタグがChIPにはより適しています。
【FAQ】ChILプローブの蛍光標識について
ChIL-seq法はChIL-probeと呼ばれる二次抗体をコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドプローブを主構成要素とする実験手法で、少量の細胞から免疫沈降を介さずにシグナルが得られます。
このChILプローブはT7 RNA polymeraseプロモーター配列+シーケンスライブラリー用プライマー配列+Tn5 transposase(トランスポゼース)Mosaic End配列を有する2本鎖DNAと抗体とのコンジュゲートで、ターゲットタンパク質と結合してTn5 transposaseの添加によって近傍に配列を挿入し、さらにT7 RNA polymeraseの添加により挿入部位を起点としてRNAを転写します。
ChIL-seqではChILプローブに付加された蛍光標識(TAMRA)は必須ではありませんが、実験プロトコール中で品質管理に使用できるほか、免疫蛍光イメージングによって固定細胞中タンパク質の局在を可視化することができます。
【FAQ】ChIL-seqを様々なサンプルで試したいが
ChIL-seqは幅広いサンプルとターゲットを対象に使用できる手法ですが、サンプルの種類に応じて最適な結果を得るためにはChIPと同様、固定化・クロスリンク条件と細胞透過処理に若干の最適化検討が必要のようです。
植物を対象にしたChIL(クロマチン免疫標識法)関連研究については下の論文もご参考にしていただければ幸いです。
Sakamoto, Y., Sato, M., Sato, Y., Harada, A., Suzuki, T., Goto, C., Tamura, K., Toyooka, K., Kimura, H., Ohkawa, Y., Hara-Nishimura, I., Takagi, S., and *Matsunaga, S.
Subnuclear gene positioning through lamina association affects copper tolerance.
Nature Commun., 11, 5914 (2020)
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19621-z
【FAQ】感染性物質のChIP
ホルムアルデヒドはバクテリア、カビ、ウイルスなど多くの微生物を不活化するのに使用可能です。その場合、室温(25℃)で使用することをお勧めします。
ホルムアルデヒドは多くの生体分子に浸透し、殺菌剤としての能力を持ちますが、不活化効率については検討が必要です。
ChIPについてはもともと1984年にバクテリアのRNA polymeraseの結合をin vivoで観察するために開発された技法です。その後様々な生物種に対して応用可能なように改変されてきましたが、カギとなるステップについては同じです。
サンプルをクロスリンクする方法はUVの使用及びクロスリンク試薬の使用等、いくつかありますが、現在主に使用されているのはホルムアルデヒドをクロスリンク試薬として用いる手法です。グリシンによる反応停止などのコントロールがしやすく、また可逆性があり加熱によって簡便に脱リンクすることが可能なため、ホルムアルデヒドが広く使用されています。
【FAQ】ChIPmentationとシングルセルシーケンシング
CUT&Tagについて、ダイアジェノードではシングルセルレベルでの実験の可否はまだ確認できておりませんが、Nature CommunicationでscCUT&Tagへの適用が報告されているほか、続報が報告されています。
CUT&Tag for efficient epigenomic profiling of small samples and single cells
現在のところ、弊社では最小10,000細胞から得られた調製済みクロマチンに使用できるキット(μChIPmentation)をご用意しております。
【FAQ】植物・糸状菌でのATAC-seq
真菌や植物サンプルのATAC-seqを行う場合は、各生物に適した核単離プロトコールを使用してください。
核の単離後は通常のATAC-seqと同じ手順を行うことができます。
ダイアジェノードではATAC-seqにご使用いただけるTagmentaseや専用バッファー、シーケンシング用インデックスプライマーを取り扱っております。
【FAQ】ChIP後DNAの長期保存
はい、精製後のChIP DNAは通常のDNA同様安定ですが、凍結融解はなるべく繰り返し実施しないことをお勧めします。
【FAQ】lncRNAs解析関連製品について
Diagenodeでは全トランスクリプトーム解析とlong non-coding RNA(lncRNA)解析の受託を行っています。
また、lncRNAの研究に使用できるキットとして、D-Plex RNA-seq kitを提供しております。
【FAQ】既知のターゲット配列が存在しない
提案できる方法としては、目的のタンパク質のゲノム上の結合部位を推定し、その配列を基にqPCRのプライマー配列を推定し、スクリーニングすることです。
この方法がうまくいかなかったとしても、シーケンシングによってChIPの確認を行うことは可能です。
【FAQ】クロマチンDNAの精製度が上がらない
NanodropはRNA、バッファーなどの不純物が定量と純度に影響する度合いが大きいため、ChIPのクロマチン収率を検証するのには適していません。
断片化クロマチンの品質管理はゲル電気泳動ないしはQubitのような蛍光ベースの定量装置をご使用ください。
また、DiaPureカラムやiPure磁性ビーズなどのDNA精製キットはChIP後のDNAやインプットサンプルの精製に適しています。これらのキットで精製したDNAは品質管理、qPCR、ChIP-seqのライブラリー調製に直接使用していただけます。
【FAQ】ChIPmentationで必要なサンプルの品管
ChIPに関しては、シーケンシングを実施する前にqPCRを行うことを強くお勧めします。
また、Bioanalyzerなどでライブラリの鎖長の分布を評価してください。
ChIPを実施する際は、クロマチン断片化後、ゲル電気泳動で定期的にすべての処理後サンプルについて鎖長を評価してください。
【FAQ】植物の転写因子用ChIPキットについて
植物のサンプルで転写因子を対象としたChIPを行う場合は、植物用のDiagenode Universal Plant ChIP-seq kitをお使いください。
サンプルの断片化条件の検討にはChromatin EasyShear Kit for Plantをご利用ください。
【FAQ】Streptavidin ChIPについて
Streptavidin ChIPはChIP-seqグレードの抗体がない場合に採用できる、近接依存性標識(Proximity Labeling Techniques)を利用した免疫沈降法です。
Streptavidin ChIPで使用する少量のフェノール・過酸化物の混入はChIPに影響を及ぼすとは考えられませんが、混入は最小限にすることが望ましいです。